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子供の頃はヒーローになりたかった。時間が経ったらいろいろわかりますね。こんなしょうがない大人になりました。どうにも、ごちゃまぜなかんじで勝手に人生過ごしますわ。 とにかく回収されるまでが生涯です。骨の残る破棄物編集所へようこそ。

たゆたうダストボックスの燃える日

   

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中途小説 循環デイズ


「八十年間、地球という星に行って自由に楽しんできていいよ」


そういわれて、わたしたちは今ここにいるそうです。というような本を読んだことがあった。
そいで、なぜわたしがこんな陳腐な一節を思い出したかというと、わたしがたったいま、死んだら楽になるかしら、とちょっとばかり考えたからだ。「陳腐」などと言ったくせにね。といっても特段辛いことや苦しいこと、生きているのが憂鬱というわけではなくて、あ。いや、憂鬱ではあるのかも。だけれど病気と呼ばれる「鬱病」なんていう大層な名称ではなくて、別に何もないのだ。そう、何にも起こらない。それこそが私の問題なのですよ。毎日繰り返されていくつまらない日常。そんで、そんな退屈な日々の中でただ酸素を無駄に吸って、地球温暖化を早める原因ともなる二酸化炭素を無駄に垂れ流して生きているのです。しかも二酸化炭素は地球温暖化なんていう地球いじめの代表的な原因であり、そんな空気ばかりを増殖させているのは大半が人間の開発した技術のせいだそうだから、やっぱり一人一人エコ意識を高めなくてはならないと思うんだ。だから省エネだとか、まあいうなればエアコンの温度を一度下げる、とか。マイバックをひっさげて、るんるんでお買い物に出かける、だとか、そういうことが今後重要になってくると思うのでした。って、うん? だけど、ソ連だのアメリカだのの軍事国の核実験のせいで大半の環境問題が良いだの悪いだの、どうたらこうたら、なんていうような話もきいたことがあったっけ。だけど、結局は人類がみんな悪いんだよね。そうだよね? 

ま、そういうわけで、おもいっきり人生八十年をエンジョイしちゃっている人類の皆さんはともかく、こんなに何もない人生、最近は特に繰り返しの日常に免疫が付いちゃってめっきり感覚が麻痺してしまったわたしが仮に死んでみたらいいんじゃないかって思ったんだ。退屈なんていっているヒマもないし、人間も僅かだけど減って、ま一石二鳥じゃないだろうか、などと思ったわけなのです。まあこれも一種の自暴自棄なわけだけど。

まあだけどこの書籍に陳述されている件に関して、いくつが疑問がわいたんだよね。そもそもね、「地球という星」にわたしたちがいたとするなら、元はどこの生物だよ? とか思っちゃうわけです。それに「地球という星」って、星単位の勘定ならばそれじゃあ、わたしたちは宇宙人なんだろうか? てなわけで。だとしたら、どうして八十年もこんなところで暮らさなくちゃいけないのかさっぱりわからない。そもそも存在の理由なんてあるのかしらね?







 と、わたしは両手に包んだままの紙パックから顔を上げずにそんなことをつらつらと考えていた。

新幹線はトンネルに入ったようで、耳の奥、鼓膜がきーんと震えて痛んだ。唾を飲み下し不快感を緩和させる。分厚い鉄板を隔てた足の裏からごうごうと騒音と振動が伝わってくる。

わたしのとなりではあいりが身振り手振りで声を張り上げていた。

「そしたらね、マサがお前の目は節穴か! って怒鳴ってさ。しかもその形相が鬼のように怖いわけ。しかもさぁ、節穴か!とかまじで言った人間に実際会ったのも初めてだしね、超ウケんの」

彼女の顔を熱心に見つめるふりをして窓の外を覗き見る。猛スピードでコンクリートの壁が通り過ぎ、雨粒が付着した暗いガラスの表面には談笑している四人の女子高生が映っていた。

「んでね、ほぼ前戯なしでさ、痛いったらないし、ちっさいのは事実なんだから、それ言ったくらいでそんなおこらなくてもいいじゃんねー。マジでありえなかったんだけどー」

「ははっ、まぁじでぇ?」

「なにそれ、あいりドンマイじゃーん」

 わたしの目の前にすわる妃奈ちゃんとその横に体育座りでひざをかかえている永久子りん。
二人は茶々入れに余念がなかった。わたしも相槌だけは欠かさない。ただ、現状の雰囲気に気持ちを乗せるのは結構めんどくさいと思うんだ。というか、全然つまらない。だからわたしは相槌の傍ら、またこっそりと窓の外を眺めてみた。あ、いまトンネルを抜けた。わたしたちの乗った新幹線はビルがそびえる街並の中を疾走していく。もうじき到着だ。上空にはまだ厚い雲が居座っていたけれど、降り続けていた小雨の粒は見当たらなかった。

「デリカシーないね、そいつ」

 永久子りんがポテトチップスの袋を口へと傾け、最後のラストスパートをかけている姿が目に入った。彼女の口の中にジャガイモだったカスが吸い込まれていく。

「ほんとだー。マサくんは、ちょっと調子乗りすぎだよね」

 そういって妃奈ちゃんは深刻な顔をしていた。

「大変だったんだねー」

 と、わたしもコメントを残す。ちょっと能天気すぎる雰囲気だったかもしれない。場違いだったかもな。そんな心配をよそにあいりはさも自慢げに、そしてたっぷりの嫌味と愉快さをかき混ぜた口調で皆の笑いを誘った。

「ほんとムカついたからさ、この絶倫野郎が!つって枕顔面に投げつけてやったよ」

ユーモアが飛び出す。
するとみんな集団トリップしたみたいに、不気味なほど高いテンションで笑い転げる。わたしもタイミングを計って、腹を抱え笑ってみせた。

女子高校生なんてものは全部おべっかごっこ。判断は全て、面白いか面白くないか。好きか嫌いか。1日の気分なんてコロコロと酷く変わりやすいものだから、天気の事情さながら、乙女たちははしゃいだりすねたりと忙しない。みんなそのロス一秒のタイミングを逃さないために必死で取り繕っているんだ。そしてその表情はまるで「わたしもこの唯一の時間を楽しんでいるんですよ」とでもいわんばかりに愉快に振舞う。そう、これこそが懸命な努力ってやつだ。

爆笑の渦のなかで、わたしも顔中を皴だらけにして、
「なにそれ、ちょーウケるんだけど!」

と騒ぎ立てる。乗り物酔いのせいか、頭痛と吐き気がした。天井が、床がぐるぐる回っている気がする。固定された座席に座っているはずなのに、まるで、メリーゴーランドの上下する馬にでも乗っている気分だったがどうにか堪えた。




そんなこんなで、駅に到着した時刻は午後5時。そのころには、天気は回復。雲の切れ間から光の束が神々しく降りてきた。

列車内はほとんどが子連れファミリーの巣穴だった。降り口で、「気をつけてね」と子供の手を引くお母さん。ちょいとまちなはれ、とわたしは声を上げそうになった。その子供といったらは明らかに小学生高学年の男子だったのだ。手を離せよ、と言いたげなその少年は坊主の頭に青筋を立てていた。そのようにね、わたしには少なくともそのようにみえましたの。だけども態度で反抗するのも良心が咎めるよね。その気持ちは、分かる。親御さんに恥をかかせたくない気持ちはすっごくわかるんだけど、むしろそのくらいの過剰な演出をしないと、君のお母さんはちっとも君の顔色を伺っていなかったと思うんだ。実際の彼の顔は口先が尖っていたくらいで、たいした変化は見受けられなかった。しかし随分と過保護な大人が多いようだった。

列車の降り口をわたしたち四人は、人ごみにもまれながら降りた。車体と屋根の隙間からうっすらと差し込んできていた明かりが、なぜだかわたしが降りるときには雲の中に隠れてしまいました。なんでだよ? 外は少し肌寒かった。

それからわたしたちはホームを抜け階段へ。そしてわたしがやっと階段の中腹、踊り場という名のオアシスに降り立ったとき、突然目の前に3歳くらいの女の子がどこからかとことこやってきて、あろうことか冷たいコンクリートの上に寝転んだんだ。どいつもこいつもわたしの邪魔ばかりしてくる。あいりたちは口をそろえてかわいいーと言った。いつまで経っても女の子の保護者が来ないからわたしはその物体を避けて次の段差へと足を踏み入れた。

なんでこんな目にあうんだかさっぱりわけが分からない。でもよく考えるとわたしたちの集団はとばっちりを受けてもしょうがない下品な話を平気でお披露目していたのですからこんな目にあっても仕方がないかな、とちょっと納得。
神様がいたとして、きっと最高の罰を与えてくださったのでしょう。なるほどーなるほど。って、納得できるか。わたしはこういう分別のない子供が大嫌いなんだ。なんだって三人はかわいいーとかいってんだか、さっぱり理解ができない。もちろん、わたしもかわいいね、と頬をひきつらせながら言ったけれども、ただのおべっかです。お世辞です。何でこんなことをやっているのか、ほんとうに情けなくなってくる。

それから、あいりの彼氏のはなしに続いて、今度は妃奈ちゃんの彼氏について、またお下劣なお話がおっぱじまった。だけどそこでもわたしはいい子ぶりっ子。うふふ、アハハで今度は茶々入れ。バリエーションもいくつかあるのよ。その場しのぎで対応しちゃう。でもそろそろもういいよ、そういう話は。お腹いっぱいなんで。げふっ。笑い疲れた。何を笑ってんだろ。と時たま考える。どうしてだろう、何も面白いことなんかないのにね。公の場で発言するには些か不似合いな題材、迷惑だと分かっているはずなのにどうしてだれも咎めないのか。笑いへと昇華するのはなぜか。うん。でもその質問は真っ先に自分に跳ね返ってくる。そうね、他の人からすれば信じられないこの行いでも、それがわたしたちのルールなのです。そういえばいいかしらね。世間から白い目で見られようと、仲間内の関係さえうまくいけば、それでいいというのがみんなの認識なのだ。

ひなカレから話が飛び火し、永久子りんに。彼女は生憎そんな人は居ないらしいが、好きな人存在有無の追及に見舞われ、ちょっと気の毒だった。

「みことはー? 好きな人くらい居ないわけ?」

これにはいい加減うんざりする。わたしは持ち前のサービス精神だかなんだかを活かしてこう言ってやる。

「うちも、いないんだよねー。つーか、どっかに星の王子さまおちてない?」

 みんなまた笑った。はい、どうでもいいです。つまんないことで笑えてしまう君らの感性は一体なんかね? ていうかそんなもん、これっぽちも欲しくないよ。血眼で探すもんでもないと思うんだ。そういうのって。でも、若い女の子たちはね、いや、こんにちの女子高生は違うのだ。そういうわけにいかない。むしろ探さずに居られない。なぜなら、この星に王子探ししに来ているわけなのですからね。だけどね、少なくとも十代のこんなかんじのオンナの子たちは、唯一自分だけの王子探しを自由に楽しんでいるつもりで、えらい火傷を負っているらしいのです。それでもこりずに、生きがいイコール恋人、なわけなのです。

改札を出て、わたしはバス乗り場を探す。つもりが、彼女らは駅に内接するショッピングモールに足を踏み入れた。おいおい、うそだろ? この疲労感をきみたちは感じないのかえ? ホイこら。この酔い。ね、わかる? 本来わたしは乗り物には強いんだぞ。それがなんでこんなに気分が悪いんだか、胸くそが悪いんだか君たちにはわからないのかえ? 

ともかく一刻も早くわたしを開放してほしかったが、まあこれが例の空気を読め、というやつですよ。そうしてわたしはだまったまま、空気を読んだわけだ。無難に。無難にみんなの後を辿っていく。

「ほんじゃ、打ち上げでもしよーや」

あいりが言う。無駄に広い通路なのに、わたしたちは周りを配慮して二列二人ずつという配列で歩く。話題内容は周囲の人間を考慮して選べなかったくせにね。

「いいねぇ。卒業を祝って! 焼肉食べ放題? 鍋食べ放題?」

「とわ子は肉なら何でもたべるんでしょ?」 

妃奈が言った。みんなでまた笑う。わたしも笑う。笑ってばかりだ。なぜかって? だって、皆が笑うから。みんなが一斉に笑うなら、わたしも笑わないわけにはいかないもの。分かる? この微妙な空気。KY(空気読めない)にはなれない。KY(食う気読めない)には流石になりたくないの。

目的もないのに、わたしたちは大きなスーツケースを転がし優雅におさんぽ。だけどしょうがない。計画性がないの。行き当たりばったりが主流のお年頃。相変わらずわたしは気分が優れない。だんだん落ち込んできた。それでも相槌と笑顔を忘れないわたし。うふふ。

目の前をつかつか歩く妃奈ちゃんの長い髪の毛が跳ねる。切れ。と思った。切れ。即座にぶち抜いてその髪を捨てろ。腹の中でとぐろを巻いている雑念は悪意に満ちている。いつも妃奈ちゃんはこう言うのだ。髪は女の命なんだから大事にしなくちゃ。あらあらまあまあごめんなさいね、わたしときたらケアさえ行き届いていないボサボサの髪なんです。おしゃれカットにしたかったのに、鏡を覗き込むたびにコケシとご対面しちゃうんですぅ。むしろ素晴らしいじゃない。日本のユーモアよ、これ。あなたも日本的古風な文化を大切にしなくちゃね。妃奈さまご自身にカットする意思がないのでしたら、わたしが丸坊主にしてさしあげますよ。わたしはコケシになるから、あなたはお坊さんになればいいじゃない。和風で素敵、素晴らしいわね。わたしはひっそりと思う。えーい、いっそ蛍光灯の光で発火してその髪よ、燃え上がれ。その騒ぎに乗じてわたしはきっと逃げだしてみせる。そうすれば、わたしは颯爽と逃走するルパンになれるんだ。みんなは「ルパーン」と艶かしく言ってわたしを追う不二子ちゃん役ね。大泥棒のわたしは「みんないっしょで当たり前」主義のみんなの心を奪って華麗に消えることができるのよ。うふふ。って、だめだめ。だめよね、これでは怒り狂ったみんなからハブりの刑が執行される。つまりは、仲間はずれな。チーン、合掌。

ふいに、あいりが指を指した。店舗案内には色とりどりのお料理。おおっとこのまさかのレインボーカラー。こりゃきた、そりゃないで。

そこは飲食店街だった。さまざまな広告看板が不二子ちゃんさながら艶かしくわたしたちを誘っている。いや、これは食欲な。性欲でなくて。そんな風にしてさっそく彼女は食べ放題のお店を発見してしまったのです。

「焼肉じゃーん!」

即座にこの話題に食いついたのは斜め前を歩いていた永久子りん。

わたしはじっとりと嫌な汗をかく。背筋がひやっと凍った。もう勘弁してほしかった。わたしを解放してくれまいか。ん? お嬢さんたちよ。わたしはもうおばばだから。気分がババアだから、もうだめなの。ついていけないのよね。なにやらさっきより気分が悪くなってきたのです。焼肉なんてこんな状態で食えるか。むりだよ無理。食べたいけど、たべたいけど……なんとなくそういった気分ではございませんの。もうおばばだし。たいへん、非常にすまないのですけれど……。

永久子りんは「焼肉じゃーん!」と叫んだ口に、カロリーメイトの棒をまるごと押し込んだ。そう、触れてなかったけれど、彼女はいつだって何かを食べているんだ。永久子りんは食い気でできている。それはもうそんなに食べて大丈夫? もしかしたら病気になるかもしれないよ?っていうくらい。見ているこっちがハラハラしちゃうんだ、まったくの話。だけどね、彼女は病気どころか、太りさえもしない。それはなぜかっていうと、彼女のアルバイトが異常な運動量を必要とするヒーローショーのキャストとだからである。ちなみに週三で稽古と、これまた毎週土日にショー本番と、とてつもなく忙しない子だから、そう説明すると納得できるだろう。なんて述べたところで、まあわたしにとっては全然関係ないんですがね。どんな重労働勤務で彼女が苦労をしていようが知らない。わたし興味わかない、どうにもカンシンわかない。というか、あんまりみんなのことを知らないんだよね。正直なところ。だけど3泊一緒にいたんだからもういいじゃないの。と、もうすでにそういうすさんだ気分だったのだ。

「えー、いいね、おいしそうだし」

そういって、妃奈ちゃんはメニューボードに吸い寄せられていった。永久子りんはさっきから窓に張り付いて店内を眺めている。

「じゃ食べるか。ね、みこと。」

「え。……うん?」

 突如名前を呼ばれて驚くわたし。ざんねん不様。

「うん。何の話だった?」

 おとぼけキャラを創出。あいりは、わたしの顔を見て大げさにため息をついた。

「だから、いまから食うの、焼肉でいい?」

「え、いまから? ごめん! わたしちょっと用事があるから、ちょっと帰らなくちゃいけなくてですね、」

 わたしは白々しくも言い訳を並べることに。

「は? 用事? 何の用事?」

「ええっと、すごく急ぎの用事でね」

「一時間くらいだよ? ちょっと飯食うくらいよくない?」

「いや、ほら部活の課題がね、まだ終わってないんだ」

 あいりはまたため息をついていった。

「そっかぁ、絵かぁ」

「そう、そうそう。案外時間がかかっちゃうんだ」

とわたしは言った。まずった。あいりの今のため息、彼女にはばれたかもしれない。部活課題はじっさいその通り。だけれど、それはともかく、わたしが行く気が微塵もないってことを彼女は見抜いてしまったかも。やばいな……。

「ま、みことは部活休み全部この旅行でつぶしちゃったもんな。しょうがないか」

はは、なーんてね、そりゃないわな。ばれない、ばれない。ってことでやはり彼女はすんなり納得してくれたのでした。うん、そんなドラマみたいに第六感が、こうピーンと来る、なんてこと、ないと思うよ。実社会ではみんな他人のことなんかなんにも気にしてないんだ。というか気にならないんだ。みんな興味わかない、どうにもカンシンわかない、ってな。

「え、じゃあもう帰ちゃうの?」

「みことちゃん食べられないの?」

妃奈ちゃんと永久子りんが近寄ってきた。わたしは必死に弁解をカッコよく述べようと奮起する。

「ごめん。明日提出だから、はやめに帰るね」

 だけど実際は気弱そうに述べるわたしの憐れな姿がありました。だってさ、ここはカッコよさじゃなくて謙虚さが重視されるだろ? やっぱり常識に乗っ取ったものの言い方をしなくちゃ、ね?

「うーんそっか、それならしょうがないよね」

「そうだねー残念」

「ほんとごめんね」

「じゃあ次の集まりは絶対だからね。おいしいもの食べようね」

 みんな口々にコメント。わたしはうん、と頷く。

「みこと、次はちゃんと来いよ」

 あいりはそういってわたしを小突いたのでした。みんなの同情をかって、ゆるしてもらったわたし。

「そうだよ、みことちゃんってばいっつも来れないんだから」

 すべてのことに苦笑するしかなかった。また少し気分が落ちた。

それからは、皆と手をふり合って別れた。

わたしはスーツケースをひきずりながらとぼとぼ歩く。情けないよね、こんな人間。スピードがでなかった。疲れているようだった。商店街を抜け、住宅街に入ると少し冷えた。春なのに、と思う。胃がむかむかと痛むのは乗り物酔いのせいじゃない。わかっているんだ。わたしがあの新幹線で気分が悪くなったのは揺れのせいじゃないってこと。わたしの気分が、みんなの上昇した気分の枠からこぼれないように、外れないようにって、必死にすがりついていたら、それに目が回ってしまって疲労してしまったからだ。さらに、振り回されて、疲れている自分に目をつぶって知らん振りしてるわたし自身に酔った。酔いすぎてまた気分が落ちた。あれはあきらかに自己陶酔の比重が多かったよね。わあ困った。なんて傲慢な態度だったのか。わたしは驕っていた。ごめんね、みんな。ちょっと八つ当たりしちゃたんだ。ちょっと最近むしゃくしゃしてたもんだから、悪気はなかったの悪気は……。

なんて思うはずはなく、えへへ。ごめんなさい、すみません。つらつらと積み重ねたフォロー、全部うそです。正直、あなたたちといて疲れちゃったんです。これホント。言い訳してももう遅いしね。まさか気疲れだけでこんなに消耗するなんて思わなかったし。きみたちとの二度目の集まりは、うん。もう、ない。もう、絶対いかないけどね。

卒業旅行という一大イベントは終焉したものの、次の入学式、新学期までまだ一カ月の猶予があった。卒業してはや四日。春休みは随分と長いものだ。わたしは春から美大へと進む。ただ、やっぱりなにもかもがうまくいかないんだ。気にくわないことばかりなんだ。そんなことばかり考えている。これはホントなのです。
それどころか、無性に腹が立ってしょうがないんだ。どうでもいい罵詈雑言系愚痴を垂れ流して笑っている自分自身にね。いますぐ逃げ出したい、言いたいことをいつも我慢している。口に出さない分だけ悪態の質が悪くなっていく。

たったふたつさえあればいいのに。そうすれば、きっとわたしは鬱々したり、憤慨したりせずにまっさらな平穏を手に入れることができるはずなんだよ。心から、そう思うんだ。
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特段意味とかはとくにないんです。

なんのはなしかっていうと、文章。ヤマもオチもとくにない、はじめましてふじです。


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奇怪日常…雑言たとえば天気のはなしとか。

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・西洋かぶれ(せいようかぶれ)
・跳ねる満月(テニス)

ふえる?

中途小説 あみこみ

「だってあいつったら、ひとを馬鹿にしたみたいな笑い方するから、あたしたまりかねてついに怒鳴りつけちゃったのね。そうしたら、それをみてた睦月が、お前頭大丈夫かよ?って、さも呆れたって風に言うもんだから、さすがのあたしも堪忍袋の緒が切れちゃって、気が付いたらポトスの鉢を床に叩きつけてたのよ」

美術室はねっとりとした油の匂いで淀んでいる。
僕は、首に巻いていたマフラーを解いて、窓枠に寄りかかった。
 
「もうほんと信じらんないったら、あんただって、こんな目にあったら怒るでしょ? ね、どう考えてもあたし悪くないよね。だって、そんなの睦月のほうがおかしいでしょ? もう、ほんと信じらんない」
 
指先がカサカサに乾いている。冬の刺す外気と隔てられたこの場所でも、乾燥警報の兆し。
 
「姉さんさ、」
 
「なあに」
 
「睦月先輩んちに行ってたの?」
 
背を向けたまま漆黒の絵の具をキャンパスの画面へと力任せに塗りたくることに熱中していた彼女は、勢いをつけて振り返るなり飛沫をとばして激しくまくし立てた。
 
「そうよ昨日は授業が終わるなりわざわざジョンブルのショートケーキを買って行ったのよ、それなのに睦月ったら犬っころに全部食えって箱ごと床に放り投げるし、その犬は犬で憎たらしく笑うし、相変わらず部屋は散らかってたし、しまいには引き取りに来いってあんたに電話する始末。もうほんと散々だったんだから。今思い返しても胃がムカムカするわ」
 
そういって彼女は筆の柄の先を噛んだ。
 
僕は、脇に並べられている様々な風貌をした石膏像を眺め回し、

「……ローマで作られた石像が夜中に笑うってほんと?」と尋ねた。
 
「なにそれ?」と彼女は鼻で笑って僕をあしらい、「あんた、きのうどこにいたの?」と聞き返した。
 
「いや、別に」
 
「どこなのよ?」
 
「……姉さんと睦月先輩は、別れたんじゃなかったっけ」
 
彼女は、歯形にまみれた絵筆を僕に投げつけた。そのまま僕の肩をはじいて、からん、と硬質な音が木霊し、床を転がる。
 
「ばかなこといわないでよ! わたしたちが別れるわけないじゃない」
 
彼女は鬼の形相でキャンバスの縁を睨み付けている。
 
「あのね、あたしが睦月を好きな気持ちは変わらないの。なのに、離れ離れになるわけないじゃないの。別れる理由なんかないわ。それに彼、あたしがいてあげなくちゃ、どうしようもないんだから」

僕は、歪な木作りの椅子の足元に寝そべっている絵筆を拾い上げた。
 窓枠がガタガタ音を立てたので振り返ると、叩きつけるように激しい雪降りの合図だと知った。
 

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音楽と芸術と歌といろいろを愛する22さいの人間です。さいきん内面の統一をはかるいみで別名でツイッターやってみたりした。ここはとにかく燃えるごみ出しの日に出しきれなかった愛着あるごみくずたちを丸めてポイするより救いのあることは何かって考えて、それでただならべた

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