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子供の頃はヒーローになりたかった。時間が経ったらいろいろわかりますね。こんなしょうがない大人になりました。どうにも、ごちゃまぜなかんじで勝手に人生過ごしますわ。 とにかく回収されるまでが生涯です。骨の残る破棄物編集所へようこそ。

たゆたうダストボックスの燃える日

   
カテゴリー「小話 西洋かぶれ」の記事一覧

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15分創作 右手の正義

自分自身のインチキさにいらいらする、

じゃあな、トンチキ。

5番街の端とニコラギー街の入り口を挟む路地の信号が点滅していた。人影はない。

自殺でもおっぱじめるのかい? とトンマがどこからかにょっと現れて尋ねた。

僕はひとこと、うんと答えてメタルがきらりとひかるみたいに黒々と照り輝く銃口を右の耳の穴に押し当てて、脇をしめた。

トンマは一度だけふんと鼻を鳴らした。僕は彼の右の手におさまっている陶器の白いマグが、コーヒーの染みで煤けたように汚れているだろうことに落胆しながら、だらしのないその立ち姿をだまってみつめていた。いくらミルクで薄めたって白にはならないんだ。どれだけの注ごうとも、ブラックコーヒーの存在がかききえてしまう前に、マグカップの容量が悲鳴をあげてしまう。色は濁ってとにかく淀んだみたいに汚いだけ。

僕は目をぎゅっとつぶったまんま、背中に当たる強烈な日差しを忌々しく思った。

自転車のチェーンが小さく唸りをあげている。チキチキチキチキ 「おい、おまえなにしてる!」

誰かが勢いをもって近いてくる。その様子がスローモーションのようにコマ送りで差し迫る。
僕は足元をふいに見た。そうして、硬いコンクリートに緑の草のしたたかさが打ち勝った光景を見た。直立していたその生きた青葉に足をかけて、そのあとはもう僕の身体が硬直して動かなくなった。

力と力のぶつかりの狭間で熱を穿った静寂が息づいている。トンマだけがにやにや笑っている。いんちきだ。とんちきだ。ぜんぶがぜんぶ、最低だ。

うそつきな人差し指。涙が滲んだ。


僕は右手の正義を振りかざすよりも、地面に叩きつける方が簡単なことを知ってしまったのだ。



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小話 西洋かぶれ「交流」

彼女は嘘つきさ、
だってね、チェスをしないかい? と誘ったら

「今日は妹たちを外に連れて行かなくちゃいけないのよ、なにせおばさんが来るもんだから手が空いてるのは私だけなの、それで母さんから今しがた連絡が入って、」

こうやって何かのせいでやむおえず僕とチェスができないというんだ
しかしぼくには『あんたなんかとチェスなんかはしない』ってあからさまに吐き捨てられるよりダメージを受けたね

(というのも、このところ、このいいわけ塗りかべが彼女のまわりをうろうろと横行しすぎて、僕にはなにがなんだかわけがわからなくなって疲れてきちまったというのがほんとのところでさ、とりわけいつもはあっけらかんとなんでもすいすい決めちまって電車のレールもびっくりのスピードでものごとが進んでって、それはそれで時たま僕のほうが疲れちまうくらいなんだけれど、今日の様子は特におかしいかんじがしたんだ、だから嘘つきなんてことでも言ってすねてみたくなったんだな)

彼女はしじゅうおろおろしていた。僕は制止をかけて、彼女に確認をとったんだ。

「ねぇ、まってよ、それってどういうことだい?今から僕の両親が来るんだ、それは君も知っているだろう? なにせ1週間も前に伝えてあるんだからね」

「えぇ、でもおばさんは子供がきらいなのよ、同じ部屋にいるのが気に食わないもんだから、あの子達を屋根裏に閉じ込めるのよ。あんなに暗くて汚くて寂しい場所にひとりおいてけぼりだなんてあんまりよ」

「じゃあ、わかった。チェスはやめにして、その子たちを家に連れて来て、みんなで遊べばいい、それなら構わないだろう?」

「そんな、でも、そんなのだめよ、おとうさまやおかあさまに迷惑がかかるわ」

「迷惑なもんか、もうじき僕らは家族になるんだ、妹君らのことだって誰も文句なんか言いやしない。みんな子供は好きだからね。君はなにも気にしなくていい」

「えぇ、そうね…でも、やっぱり外のほうがお天気がいいじゃない?だから私と妹たちとで、」

「ねぇ、僕は前々から言いたかったんだけれど、最近何かあったのかい? 何をそんなに遠慮しているのだろう?」

彼女は微笑もうとしたが、それには失敗し、ぎこちなく口元を引き伸ばしたまま何か言葉を探しているようだった。

「僕はたよりないのかな。それとも、僕がなにか君を不快にさせるようなことをしたのだろうか?」

「ちがうのよ、そうじゃないのよ、そういうことではなくて…」

その後直ぐに、妹君らが彼女のお母さんに送られてきて、そのうちに僕の両親も到着した。
彼女は、あいさつと少々の談笑を交わしたのちに、外に出て行って、それから、1時間ばかしして戻ってきた。
その後は皆でわいわいさわいだけれど、僕はまだ、彼女に尋ねなければならないことは山ほどあったけれど、どんなふうに問いただせばいいのか僕は検討もつかずにいたのだった。


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ぬし

ふじとう(moccomoco)
音楽と芸術と歌といろいろを愛する22さいの人間です。さいきん内面の統一をはかるいみで別名でツイッターやってみたりした。ここはとにかく燃えるごみ出しの日に出しきれなかった愛着あるごみくずたちを丸めてポイするより救いのあることは何かって考えて、それでただならべた

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